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02

3月

2011

裁判員裁判体験記㊦

その日、午後から始まった法廷には、漆黒の法衣を着装した裁判官と私たち裁判員や補充裁判員の計11名が、法廷の最上席に座りました。被告人をはじめ、検察官、弁護人を見おろす感覚は独特で、別人になったような気持ちでした。
 裁判員の席からは、被告人の追いつめられた気持ちが手に取るように伺えました。傍聴席には、メモをとる新聞記者も含め、15名の傍聴者もいました。
 いよいよ、裁判長の合図で裁判が始まります。検察官が起訴状を読み上げ、続いて、検察官による冒頭陳述(20分)そして、弁護人の冒頭陳述(15分)が行われました。
 それぞれの冒頭陳述は、法廷内の大型ディスプレイと裁判員の席に設置された液晶ディスプレイに映し出され、事件の詳細がわかりやすく示されました。裁判長からは、公判前整理手続で整理された争点が告げられました。
 休廷をはさみ、証拠の取り調べ、被告人質問が、弁護人(50分)と検察官(30分)の双方からなされました。裁判員の席から正面で見る被告人の顔は、核心を衝く質問に、苦渋でゆがみます。冷静かつ客観的に、被告人がおかれている酌むべき情状を判断しなければなりません。
 2日目、裁判員の1人に事情ができ、私はこの日から裁判員に委嘱されました。精神的に重圧が増しました。
 直接被告人に質問をすることになりましたが、真偽を聞き分けながら被告人の発する苦しい弁明を聞かねばならないストレスに押しつぶされそうでした。
 しかし、評決は明日に迫っています。法に基づいた納得のいく判決を決めなければなりません。
 3日目は、適用すべき量刑についての評議でした。にわか裁判員には、極めて難しい判断でした。議論を尽くし、意見の一致がないまま、裁判長の指示で多数決を採用し、最終評議の結論を出しました。
 午後、ついに、判決の宣告です。裁判員にも立ち会いが求められました。張りつめた空気の法廷で、裁判長が判決文を一気に読み上げます。被告人の顔がゆがみ、すすりあげる声が聞こえてきます。被告の更正にもつながる判決であったか。一抹の不安が心をよぎりました。     (おわり)